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BPCC13最優秀賞 伊達博氏インタビュー

BPCC13最優秀賞 伊達博氏インタビュー

日本MITベンチャーフォーラムは、毎年、ベンチャー企業を対象にしたビジネスプランコンテストを開催しています。
当コンテストの特徴の一つは、書類審査を通過した起業家は「メンターと共に」ビジネスアイデアを練り上げ、コンテスト決勝の舞台でそれを披露するという点です。

今回は起業家サイドからお二人、メンターサイドからお二人、合計4人の方にお話を伺いました。

伊達 博氏:第13回ビジネスプランコンテスト&クリニック ストラテジックグロース部門 最優秀賞
藤田 純一氏:第13回ビジネスプランコンテスト&クリニック ストラテジックグロース部門 新日本賞
冬野 健司氏:MIT-VFJ副理事長
馬場 研二氏:MIT-VFJ理事
上記四名のインタビューを3回に分けて掲載します。

まずは伊達さんからです。

プロフィール
伊達 博(だて ひろし)
株式会社システム・ジェイディー 代表取締役社長
太陽電池アレイテスター「SOKODES(ソコデス)」で、第13回ビジネスプランコンテスト&クリニック ストラテジックグロース(SG)部門 最優秀賞を受賞

今まで原因の特定ができなかった太陽光パネル故障がわかる
聞き手:最優秀賞受賞おめでとうございます。ではまずSOKODES(ソコデス)という製品について教えてください。

伊達:はい、SOKODESは、一言で言うと、太陽光パネルの「検査機」です。
以前から太陽光パネルが「発電している状態」で電流や電圧、温度を測るテスターと呼ばれる「測定器」はありました。SOKODESはパネルが「発電してない状態」でも障害を検出出来る「検査機」なんです。しかも太陽光発電所で「どのパネルが故障しているのか」がピンポイントでわかります。

聞き手: なるほど、「検査機」ですか。SOKODESの顧客は誰になりますか?

伊達:そうですね、まず、お客様のタイプは大きく4つあります。

sokodesu一つ目は発電事業者様です。
二つ目はシステムインテグレーター様。システムインテグレーターっていうのは発電所全体の設計をやる会社ですね。
三つ目は施工会社様。太陽光パネルの設置を行う会社です。
そして4つ目はメンテナンス会社様。これは最近登場し始めた業種で、太陽光パネルのメンテナンスを生業にしている会社です。そういった会社さんもSOKODESを買っていただいています。

聞き手:ではSOKODESはその方達の、どんな問題を解決してくれるんですか?

伊達:はい、これまで太陽光パネルは「メンテナンスフリー」という認識で売られてきました。けれど実際に運用をはじめると、色々な故障が発生するんです。そうすると、その故障の原因を特定することが必要になってきたんです。

このSOKODESは故障の原因、たとえば、発電低下の原因から、モジュールの内部断線に起因するもの、またはケーブルの接触不良に起因するものをきちっと切り分けることができるんです。つまり何が発電を低下させる原因になっているかが判るわけです。

今までは原因の特定ができなかったのが、これを使うことによってハッキリわかる。これがメリットです。

聞き手:これまではパネルをいっぱい敷き詰めた太陽光発電所で出力が上がらない場合、それは故障じゃなくって、天気が悪いからではとしか思わなかった。けれどSOKODESを使うと、出力が上がらないのは、天気のせいじゃなくてパネルのせいじゃん、というのが分かるようになったと。
そういう理解であっていますか?

伊達:はい。今までは発電所の中に不良パネルが混じってても気づかない例がたくさんあったわけです。けれどもSOKODESを使うことによって不良パネルが顕在化してくると施主さんの意識が変わって、太陽光パネルはきちっと保守していないと危ないんじゃないかという考えになってきた。そういう意識の変化から、いまお客様が増えているということですね。

世界市場をとるつもり
聞き手:なるほど。お客さんが増えているということですが、マーケットサイズはどのくらいと見込んでいますか?

伊達:だいたい、国内市場だけ見るとSOKODES自体は1000〜2000台くらいのマーケットと思ってます。SOKODESは一台85万円なので、そんなに大きなマーケットではないです。

ただ、このSOKODESの機能を発電所に組込み、パネルを遠隔監視するというシステムにするとビジネスはもっと大きくなります。
現在の各種遠隔監視システムっていうのは太陽光発電所がどれくらい発電してるかという状況を、施主さんに知らせるシステムになっています。ただそれだけだと太陽光発電所が100%の能力で発電して今の状況なのか、それとも80%の能力で発電してて今の状況なのか判断できないわけですね。

けれどもSOKODESの遠隔監視を入れておくと、先ほどお話したモジュールの劣化であるとかケーブルの劣化っていうのが数値化されて見えてきます。

人間に例えて言うと、健康診断でガンマGDPの値が上がっていたのと同じようなものでしょうか。まずそういう太陽光発電所の健康状態を自動的に見える化できるというのがSOKODESの特徴です。で、そちらの方のビジネスが非常に大きくなると読んでいます。
特にヨーロッパ・アメリカっていうのはすでに先進国として、太陽光パネルが普及してますので、そういったところまでこの技術をうまくビジネスにできればですね、かなり大きな市場にはなると思います。

アメリカではシリコンバレーを中心にカルフォルニアから全米に向けての太陽光発電が普及し始めています。PayPalで財を築いたイーロン・マスクが経営しているソーラー・シティーという会社が有名ですね。

彼らがどういうサービスを提供しているかというと、まさにモニタリングシステムをユーザーに提供しているんですね。しかし、やっぱり壊れるパネルもあるわけで、それをどうやって見つけて修理するのかがぽっかり開いている市場なんです。だから、私どもはそういうところに進出して世界の市場を取っていくという計画をしてます。

諦めずに続けることができた理由


聞き手:マーケットサイズはかなり大きいということですね。

話は変わりますが、ビジネスプランコンテストのメンタリングはどんな感じでしたか?
例えば、自分はこっち行きたいのに、メンターの方からはあっちだ、とか言われたりするんですか?

伊達:そうですね、SOKODESは必ずしもこれイケイケドンドンで作ったわけではなくって、最初は太陽光パネルの検査機に市場なんかあるのっていう疑問を実際にもらいました。

聞き手:はじめの頃はメンターの方からも厳しいコメントをいただいた、と。

伊達:はい。ただ、私の信念がですね、いろんな方とのヒアリングを重ねていくに従って、すごく強いものになっていったので、だんだんメンターの方を説得できるようになっていきました。

聞き手:市場があるという確信が社長にはあったということなんですが、その確信はどこから来るんですか。実際に困っているお客さんから頼まれたとか?

伊達:いえ、お客さんに頼まれてというわけではないです。
あるとき、太陽光パネルの信頼性の講演を聞きに行ったんです。懇親会で、自分は検査機は必要だろうと思って、講演者や他の方と話をしてみたら結構「ああ、それがあると助かる」って声があって。その時点では全然確信はなかったんですけど、自分はやっぱりこれ、開発したいと思ったんです。で、色々アプローチを考えていくと、半導体の検査の技術が応用できそうなことが分かって、ウチは半導体の検査の技術があるのでイケるかな、と。

聞き手:「こんな問題があるはずだ」という仮説から入っていたんですね。ふむふむ。
話をメンタリングへ戻しますが、メンターさんに言われて印象に残っている言葉は?

伊達:うーん、「諦めるな」ということでしょうか。ベンチャーをやっていると途中で挫けそうになるわけですね、資金的なことも含めて。だけどもやっぱり諦めずにやっていくと、色々支援してくださる方が出てきて。やっぱり継続は力じゃないですけど、それを何か身にしみて感じています。

SOKODESの場合、国の施策として全量買取制度ができ、太陽光パネルの保守の重要性が認知されるまで諦めずにやれたのは、いろんな側面でメンターの方に支援していただけたからです。感謝しています。

聞き手:お話を聞いていて面白いと感じたのは、「諦めるな」っていう励ましは専門家でなくても言えることじゃないですか。でもメンターの方にそう応援してもらうと、やっぱり、心強いものなんですね。家族から「頑張って」と言ってもらうのとは違う感じですか?

伊達:違う感じですね。メンターの方からは単に「頑張って」って精神論的なことではなく、人脈や資金繰り的なところなど色んな側面から支援してもらっています。それらを合わせたうえでの「諦めるな」だと。

 

一番の変化はネットワークが広がったこと

聞き手:なるほど。
最優秀賞を受賞して変わったことはありますか?

伊達:一番大きいのはネットワークが広がったっていう点ですね。
新日本監査法人からお客様の紹介とか、色んなイベントの紹介であるとか、そういうお話もありますし。

あとは海外展開の足固めが出来たとですね。これは受賞したことによって、まず国内での製品認知度がアップしてまして、一気にグワッと注文依頼がきたりしてます。

それをベースに、例えば福岡県を例に取ると、福岡県にはシリコンバレー出張所があるんですけど、そこの担当の方が実際に我々がシリコンバレーでターゲットにしているところとつないでくれたりとか、そういった具体的なアクションがドンドン連鎖して起こってます。

聞き手:最優秀賞を取った後、米国大使に会えたとも聞きましたが…

伊達:はい、今回は米国大使のケネディーさんとお会いすることが出来、その後のネットワーキングパーティーでシリコンバレーの企業と知り合って、今でもメールでつながっています。

聞き手:ケネディ大使との写真は話題作りに効きそうですね。
さて、お時間も少なくなってきたので、応募しようか迷っている方に一言いただけますか?

伊達:そうですね、会社ごとに成長フェーズがあると思います。それにあっているなら応募すべきでしょう。自分は海外展開したいと思ったので応募したんですが、実際にその点で成果がありましたから。

副賞で、上海で開催されるCEOしか参加できないクローズドなフォーラム、EY Strategic Growth Forumへも招待してもらえました。
そこでは、中国全体がどういう風な方向に向かっているか、例えば私どもだとエネルギー事業なんですけど、そこを統括して現地のASEANの担当者の方に色々情報を聞けました。
だから、ほんとにマーケット調査っていう意味だけでもすごく大きな成果がありました。

また、そのイベントを主催しているアーンストヤングの担当者の方から参加している企業を多数紹介してもらってますので、そこと繋がろうと思った瞬間に連絡を取ればすぐに行けると。これはすごい大きな財産です。

聞き手:ではもう中国から発注が来てるんですか?

伊達:いや、中国からは来てないです。というのは、最初は私達は中国へは進出しないと判断したんです。そういう判断できたというのもすごく大きな収穫です。

聞き手:なるほど、何かを「しない決断」ができたと。
ずいぶん長丁場になってしまいましたけど、お話をお聞かせいただきありがとうございました。

伊達:ありがとうございました。

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