INTERVIEW

日本MITベンチャーフォーラム(MIT-VFJ)
 理事 林伸彦 氏

 

一にも二にも「人」〜特徴的な方々…
「王道を行っていない人達」との経験が糧

MIT-VFJインタビュー今月は、MIT-VFJの副理事長や事務局長、BPCCやVMPと、過去にさまざまな企画・運営に携わってこられた、現理事の林伸彦(はやし・のぶひこ)さんに、理事の大野一美(おおの・かずみ)さんが聞き手となってお話を伺います。
林さん、どうぞよろしくお願いします。

大野

MIT-VFJに参画したのはいつでしたっけ?

2012年9月なので、12年経ちましたね。

大野

うわ、早いものですね。
その間いろいろな役職に就いていただいていますが、そもそもMIT-VFJに入られたのは私がお声がけしたことがきっかけでしたよね。

そうです。大野さんと日本政策投資銀行DBJの女性起業家ビジネスプランコンペティションで出会いました。
2012年はDBJのコンペティションが始まった年でしたね。

大野

応募者募集のためのプロモーションをいろいろなところでやっていたんですが、ビジネス・ブレークスルー大学BBTの受講者を対象に実施したとき、そこに林さんが参加されていたんですよね。

僕は一般枠での参加でした。

大野

あ、そうか、一般枠もあったのですね。
そうそう、「女性だけの会合の中にあなたは『黒一点』。どうして参加されたんですか?」みたいにお声がけしたのでした。
その時、林さんは会計士だったのでしたっけ?

会計士になる前ですね。
あずさ監査法人には在籍していましたけど。

大野

あずさ監査法人にいらして、資格を取るための勉強中だったとか?

会計士には3回試験があって、初め2回の試験が終わった後に監査法人・企業へ入社して2年の実務研修があります。
監査法人に入社して経験を積んでいる時に大野さんにお会いしました。
見習い会計士ですね。

大野

そのような状況でお目にかかったのですね。
林さんが海外に興味があるという話をされていたので、「我々MIT-VFJは国内で行っている事業ではありますが、グローバルですよ」というような話をしました。
それで興味を持ってくださったのだと思いました。

何を期待してMIT-VFJに参加しようと思われましたか?

起業家との出会いや、経営者との接点ですね。
いろんな経営者の話を聞くことを目的に東京に出てきましたので、当時はいろいろなセミナーに参加していました。
DBJコンペティションのプロモーションでは、ビジネスプランの書き方についての講演もされていて、私はそのビジネスプランの書き方に興味があって参加しました。

MIT-VFJには、当時のBPCCで、応募してきた起業家が合宿でどんどん変わっていくと聞いて、そこに触れたいと思い、参加しました。

大野

公認会計士を目指していた人が、そういう場に触れたい、経営者に触れたいと思われたのはなぜでしょうか?

僕が会計士を目指した目的は数字に詳しくなりたかったからです。
大学で法律を学士レベルで学びましたので、次は数字だと。
経営するには、最低限、数字を読めないと何もできないじゃないですか。
経営していく上で、必要なパーツで重要なものを勉強しなきゃいけないと捉えていました。

大野

では、会計士になりたいというより、経営者になりたいと思っていたのですね。

そうですね。
僕も経営に関わって何かの事業をやっていきたいと思っていました。
具体的なものはなかったのですけど。

大野

経営に直接携わりたいと思う会計士の方は多いのでしょうか。

多いと思います。
財務会計・管理がメインか、それをもっと踏み込んで経営をするか、2パターンあると思います。

大野

起業家にもよりますが、数字に弱い人が結構多いですよね。
だから会計士の視点でアドバイスできる人が近くにいてくれたらすごい強みです。

MIT-VFJの運営部メンバーになったのはどういうきっかけでしたっけ?

当時BPCCの合宿前に、募集されていた運営メンバーのボランティアへの応募がきっかけです。
大野さんのFacebookを見てそれを知りました。

大野

まあ、見てくださっていて、すごく嬉しいです。
2012年9月から運営メンバーになっていただき、2016年7月には理事に、2018年7月から2022年6月の4年間は副理事長に就任されました。
担当された仕事や役割を具体的に教えてください。

最初に関わった時は川原さんが理事長で、月例セミナーなどは川原さん主導で動かしていていましたから、僕は運営サポートという感じでした。
当日の運営手伝い、会場セッティングなどをしつつ、セミナーに一緒に参加させてもらっていました。

その後、本橋さんが理事長になられた時に、本橋さんは巻き込み型だったので、どんな人を呼んでこようかとか、月例セミナーやBPCC自体をどうやっていこうか、どんなコンセプトでいくのかもう一度見直して…みたいなところから、侃侃諤諤一緒に作り込んでいけたのも面白かったです。

大野

本橋さんが強力にリーダーシップを発揮されていましたね。

リーダーシップは皆さんそれぞれ違っていて、いろいろ経験させてもらったのは本当に糧になっています。

本橋さんと一緒にやっている時は、組織の存在意義をずっと考えていました。
BPCCも10年以上やっていて、スタートした当時は新しかったのですが、10何年経って今も新しいのか?とか、そんな自分で自分を刺すような話をしていました。
「今、何が足りないんだ?」と、いろいろな人に聞きました。
スポンサーのかたがたとお会いした時も、そういうヒアリングを一緒にしたり、次はどんなことしなきゃならないか、という話をしていました。

大野

スポンサー回りも一緒に行かれたんですね。
そんな中で印象深かった出来事や、MIT-VFJに参加されて運営してきて心に残った出来事はどんなものでしょうか。

いろ濃い経験をたくさんさせていただいたので、これが…というのはないのですが、
メンタリング合宿ではよくみなさん徹夜されてましたね。

大野

大勢の人たちがよく徹夜されてましたね。
徹夜しないでいいよって言ってるんだけど、どうしても(笑)。

あと、元理事長で残念ながら他界された鈴木啓明さんが、合宿2日目の中間発表でコメントされたことですね。
2つのキーワードで言うと「金」と「汗」。
「金の匂いがしない」というのと「おまえの汗が見えない」ですね。
僕も数字に携わっていましたし、数字というのは積み上げるものだとか、そんなふうに思ってましたけど、鈴木さんがそれを感性で捉えているのはすごく印象的でした。
どうやって感性で捉えるのだろうと思っていましたが、その方の努力があってこそで、数字は後からついてくるということ。
やっぱり汗から金に繋がっているのだなと。
その時とても腑に落ちて、すごく印象に残っています。

大野

鈴木さん自身もベンチャーを頑張ってきた経営者なので、経験と実績の成せる技ですね。

ところで、前回のインタビューで「メンタリングの肝は何か」という質問に対し、馬場さんが「素朴に聞く事、寄り添う事で相手の変化を引き出すこと」とおっしゃっていたのですが、林さんはどんなふうに考えていますか?

聞くことももちろんですが、経営に携わってないからこそ見える本質を、遠慮なく突くこと。
その時に気分を害されて喧嘩になっても、僕は構わないと思っていて。
そこは、継続的に経営者と接点を持ってメンタリングをされている方とは、僕は全然違うと思うんですけど。
イラッとされたら、ある意味的を得てるのだな、イラッとするからこそ刺さっているのだと、僕は思っています。
いつかその方が振り返った時に「あの時の言葉はそういうことか」と腑に落ちてもらえたら、それは成功だと思います。

大野

なるほど。それはメンタリングの本質です。
だからこそ、MIT-VFJのメンタリングは他のメンタリングと比べてためになった、良いメンタリングをしてもらえた、とおっしゃるファイナリストの方がすごく多いです。

泣かせりゃいいというものではないですが、やはり最近は誰も泣かない。
それはどうなんだろうと、個人的には思っています。

大野

鈴木さんはよく泣かせていました。

その後でみんなでサポートして、いろいろ話を聞いたりして、そこから引き出せる言葉もいっぱいありますしね。

大野

鋭い指摘をした後で、愛を込めてハグするみたいなところで泣かせちゃうんですよね。

林さんがMITベンチャーフォーラムに参加した当初と現在では変わったと感じることはありますか?

この12年でwebからSNSの浸透、情報の広まり方がとても多様化し、IRの重要性が大きく変わりましたね。
ネガティブなニュースはやはり広まりがちですし、一方でポジティブな評価を発信する人はいても、なかなか広まらない。
それでは株価形成にもなかなかつながらない。
ポジティブな評価をしてもらうのにプレスリリースをどれだけ出し続けるかって、大手企業でもなかなかに至難の技です。

大野

職種にも会社によっても様々でしょうが、ヒントなどありますか。

基本にたちもどって、マーケティングとコミュニケーションと思います。
マーケティングの顧客を「投資家」におきかえて分析して、「投資家」とコミュニケーションを重ねることですね。
「トヨタイムズ」は象徴的な取り組みとみています。
あの会社ですら、自社のポジティブな評価をしてもらうことに苦労されたのだと、勝手ながら推察しています。
そして、評価「してもらう」のではなく、評価「されるべく発信する」自発的な行動に出たのだと理解しています。
そういう会社にポジティブな発信をしっかりやってくれるマスメディアやIR機関があってもいいと思います。
日本は、こういうところが本当に欠落していると思います。
そうすると自前でやるしかなくて。
自分のことは自分でしっかり伝えてやってくという、海外では当たり前だろって言われるようなことをちゃんとやるってことですね。

大野

どうして日本人はそこが下手なんでしょうね。

自分をほめるのが苦手だからじゃないですかね。

大野

上場したらもうそれで嬉しくなっちゃって、経営者がその先を目指さないということもあるし。

上場にあたっては、経営者がマインドセットをしっかり変えることも大事だと思っています。
申し訳ないですけど、見方によっては株主にとって経営者ってパーツの1つじゃないですか。
会社の事業価値を上げるための。
スタートアップのなかにもVC投資を受けて、自分の持ち分比率下がっていくと、相対的にモチベーションが下がっていく人っていらっしゃるんですよね。
創業時の思い通りにやっていけないことも出てくれば、それはそうなんでしょうけど。
でもそうなった時にモチベーションが下がるのだったら、何か適切なマインドセットの置き換えを促してあげないといけないというのは最近思っています。

大野

MIT-VFJでファイナリストになった人たちもその後も頑張っているのですが、どうしてもそこまでいかなくて、経営者が替わってしまうことも多々ありますね。
なかなか難しいのですね。

経営者がかわっても、その会社が「社会に実現したいこと」という軸で捉えなおして、頑張っていけたらいいのですけどね、
なかなか難しいのが実際ですね。
そういうときにこそ、そのかた個人のライフプランとして、何を価値として社会に貢献してくのか、大人としての根本が問われるので、見つめ直す機会になると思います。

大野

MIT-VFJへの参加が自分自身にもたらしたものは?

一にも二にも「人」ですね。人との繋がり。
大野さんから始まって、鈴木ヒロさん、川原さん、本橋さん、メンターのみなさん。
特徴的な方々…「王道を行っていない人達」との経験は糧にさせてもらっています。

大野

「王道を行っていない人達」!
すごくいいです!(笑)

理事をはじめ副理事長までの役職をいただけたのはすごくありがたいと思います。
理事、副理事長になったからこそ考えることってやはりあるんだなと思いました。
経営者の方々はどういうことを考えているのかいうのを知りたくて参加し始めましたが、僕自身は経営者でも何でもなくて、ぬるま湯の中で想像を働かせている程度でしかなかった。
そんなことを、理事、副理事長をする中で、身に染みたということがあります。

大野

会社の運営・経営者になったようなものですものね。

MIT-VFJの今後に期待することは何でしょうか?

MIT-VFJの一番の価値はメンタリングです。
今でこそメンターをつけていろいろ活動していくことが普通になりましたが、MIT-VFJ創設当時(2000年頃)は普通じゃなかったですよね。
それを日本でちゃんと打ち出し、きっかけになっていったという思いを持っています。

そうなると、次はなんですかね。
次の新しい価値が出せてこそ循環というか、新陳代謝も出るでしょう。
だから次の新しい常識を見つけて、そこにベットしていくことを期待しています。

林 伸彦(はやし・のぶひこ) 氏 プロフィール

公認会計士・税理士。
大学は法学部を卒業後、会計士試験に合格し有限責任あずさ監査法人に入所。その後2015年に退所し、独立開業。
「林戦略会計税務事務所」として、個人事務所をベースに活動するとともに、スタートアップ企業はじめ社外取締役・監査役も兼任。
ミッションは、企業・経営者のバリューアップ。
財務・会計はもちろん、経営・M&Aのアドバイスから、管理部・内部監査などの組成・整備、採用・人事、法務、株主総会・役員会の開催運営などの総務まで、その会社に不足しているパーツで私が埋められるものをサポートしています。

INTERVIEW一覧へ