INTERVIEW

Missionは犬猫の歯周病ゼロ
寿命と健康寿命を延ばす

VMP25ファイナリスト
株式会社Ani-lience代表取締役の實廣 亜希子 氏

第25回VMPファイナリスト、株式会社Ani-lience代表取締役の實廣亜希子さんに登場いただきます。

周囲の人達の悩み解決から生まれた、犬猫の歯周病予防サービス

小澤
實廣さん、メンタリングと最終発表会と怒涛の日々でしたね。お疲れ様でした。
まずは、貴社について、そしてビジネスモデルについて教えてください。
實廣
私は、犬猫の歯周病のリスクチェックキットと、予防サービスというものをやっています。
具体的に言うと、歯周病のリスクチェックキットを、飼い主さんに月一回使っていただきます。
且つデンタルケアの指導を行うことでデンタルケアが上達し、これを継続的に続けてもらい、歯周病の早期発見に繋げられるという事業となっています。
大場
この事業に着手したのはなぜでしょうか。 これを思いついたきっかけとなるエピソードはありますか?
實廣
兼業先のビジネスプランコンテストで応募したのがきっかけです。
ただその時は、現在とは全然違うプランで、犬猫のアレルギー性皮膚炎を改善するものを考えていました。
人用の化粧品を犬猫用に応用できないかというところを考えていました。
ただ、症状のひどい子は薬と併用しないとなかなかよくならないんです。
化粧品だけではよくならないと、獣医さんにも言われまして。
もともと私が化粧品会社にいた頃に発案したものだったのですが、自分自身の研究もそこまで活かせるものではなかったですし、インパクトがあまり残せないなと思いました。

そこからピボットして飼い主さんの悩みなどを聞いていく中で、お口が臭かったり、歯磨きが難しいということを伺って。
そこで犬猫も歯周病になるんだということを知りました。
以前、私がやっていた病気の早期発見をする研究というのが、犬猫にも使えるかもしれないと思い、そこが発端になっていますね。
小澤
人用に研究していたものを犬猫用にシフトしたということですが、そもそもなぜ犬猫用という発想が出てきたのですか?
實廣
そうですね、もともと犬猫が好きで、飼っていたというのもあったのですけど。
ただその時はほとんど歯磨きはできていませんでした。
ですから自分の実体験というよりは、自分の周りの飼い主さんのお話を伺って、かなり根深い課題だと感じたというのがありますね。
今まであまり取り組まれてない領域ですし、私自身がやる意味もあるのかなと思いました。
小澤
周りの方たちのお悩みや現状を見ていて、自分自身の持っているノウハウが役に立ち、ビジネスとして成り立つと見抜かれたのですね。
實廣
その通りです。
小澤
私はペット関連業の展示会にもよく行くのですが、歯周病のジャンルは年々進出する企業が増えていると感じています。
関心度がすごく上がっていますよね。
實廣
はい、そうですね。
小澤
歯磨きフードといったものが多いですが、歯周病を自分で定期的にチェックするというのはまだ見たことがなかったので、實廣さんのビジネスは伸び代が大きいのではないかと個人的に感じました。
實廣
ありがとうございます。

Missionは犬猫の歯周病ゼロ

小澤
この事業で、中長期的に、どんな世界、社会、未来を目指していらっしゃるのでしょうか?
實廣
現在、重度の歯周病になっている犬猫がかなりの割合でいるので、最終的にはそれをゼロに近づけるというところが、この事業のMissionです。
ただ、このキットだけでできることは少ないので、獣医師さんとか、他の会社さんとのソリューションと組み合わせながら認知拡大と事業領域の範囲拡大をしていきたいなと思っていますね。
小澤
規模としては、対象は国内ですか、それとも最終的には国外を目指していますか?
国外でしたらエリアのVisionはお持ちですか?
實廣
そうですね、最終的には国外も考えていています。
今タッチポイントを持っているところとしてはシンガポールがあります。
その他にも韓国や香港などは、ペット需要がかなり高いと聞いているので、そのエリアも調査し、実際に展示会に出展したりして、確かめていきたいと思っています。
小澤
将来的に、ペットの歯周ケアというところのみならず、そのターゲットの範囲を広げたり、応用していくというようなことはお考えですか?
實廣
今現在はペット産業で、しかも歯周病というかなり狭い領域の事業ではあるんですけども。
コアの技術、研究手法として、未病の段階から病気の早期発見をするというとことは、動物だとまだまだ全然進んでないんですよね。
だから、どの動物にも、応用できる可能性があると思います。
例えば今取り掛かっているのが馬のお腹の病気ですね。
疝痛という病気なんですが、その早期発見の事業にも取りかかっています。
また、歯周病になるような動物は他にもいまして、動物園の動物もなるんですよね。
他の疾患とか動物種とか、そういうところに広げていけたらいいなと考えています。
小澤
今はおひとりで事業を推進なさっているのですか?
實廣
社員は一人で、他は業務委託で参加とか、プロボノで参画していただいています。
もし継続的に参画いただける人がいればお願いして、それまでは外部の方に委託してやっていただくというのが本筋かなと思っています。
小澤
これからの事業の成長と規模を考えると、良いパートナーや、一緒に組織が作れる方が見つかるといいですよね。
實廣
そうですね。 獣医さんなどは強いパートナーになります。
今ももちろん参画していただいていますが、もうちょっと深く…例えば顧問とか、そういう形で入り込んでいただくようなことを考えてます。
小澤
チーム作りはスタートアップの皆さんの悩まれることの1つでしょうかね。
實廣さんは、元々は研究がお仕事ですよね。
起業するときには、研究と経営とが一気に押し寄せたのではないかと思いますがいかがでしたか。
實廣
そうですね、もともとずっと研究者で。
知財とかもやりつつって感じですね。
最初の1年目は、本当に失敗というか、学びが多かったなと思います。
今2期目が始まったところで、再整理し、ちょっとまた出発しているという感じですね。
ちょっと無駄な出費みたいなところもあって、それを切ったり。

表面的なものではなかったMIT-VFJのメンタリング

小澤
研究を世の中に自ら活かすために起業という決断をなさったのはご英断ですね。
ご苦労はされると思うのですが、ビジネスプランコンテストなどのご活用もしっかりされています。
MIT-VFJ 第25回ビジネスプランコンテストをどこで知りましたか?
實廣
友人の紹介です。
前年度のファイナリストに選ばれた鈴木葉留奈さんです。
他のアクセラレーションプログラムでご一緒しました。
鈴木葉留奈さんがFacebookの投稿で、MIT-VFJはすごくメンタリングが良くて、大変ためになったと投稿されていまして。
それで私も受けてみたいなと思いました。
小澤
実際にMIT-VFJのメンタリングを受けてどのように感じましたか?
實廣
今まで複数のメンタリングも受けてきていて、そのツギハギのビジネスプランだったんですよね。
その中で「実際に販売するとなったら、こういうことが必要だよね」「こういうビジネスモデルが必要だよね」というところで、抜け漏れみたいなところがまだまだありました。
そこを埋めていただけたことが一番大きかったと思います。

メンタリングの時はかなりの宿題が出されるのですが、そこから次のメンタリングまでの時間が結構つらくて大変でした。
そこはすごく今でも糧になっていると思います。
いただいたコメントとかアドバイスとかを踏まえて、ビジネスプランなどの再構築をしていっている状態ですね。
大場
具体的なメンタリングのエピソードはありますか?
實廣
結構いろいろなものがあるのですが、BtoBtoCで事業をやるのかとか。
デンタルケアの個別指導は人が介入するところなので、本当にそこはスケールするのかとか。
そこは今もまだ課題ではありますけども、アドバイスいただいてよかったなと思います。

あとは合宿時に、理事の磯谷さんから、「工場での試験紙の生産をこういう風に工夫した方がいいよ」というコメントをいただきました。 そこは全く考えてなかった視点で、なるほどなと思いました。
小澤
辛かったことはありましたか?
實廣
今までも複数のメンタリングを受けてはいたのですが、表面的なアドバイスしかいただいてなかったんだなということが、今回ですごくよくわかりました。

MIT-VFJでは、メンターの方に伴走していただき、ミーティングの頻度も多いですし、中身に踏み込んでアドバイスしていただきました。
そこで見えてこなかった穴みたいな、事業の足りなかった部分を埋めていかないとならない。
そこをどうするんだというところを次までに考えてこなきゃいけなかったり…。
結構そこは難しいなと思いました。
具体的に話が進みづらかった時期もあり、そこが結構辛かったですね。
最初のプランとあまり何も変わってないんじゃないかと思うこともあり、そんなジレンマみたいなところがありました。
大場
メンタリングを受けて一番感動したこと、学んだことはなんですか?
實廣
スケールする時にどうしていくんだというところが、問いとしては一番大きかったですね。
そこは今も考えているところではありますし、そこから端を発して、本当にBtoBtoCがいいのかということも含めて、今再検討している段階です。
もしかしたらBtoBから始めて、BtoBtoCはその次なのではないか。
その辺りを、今一緒に推進しようとしているメーカーさんたちと協議しているところです。
大場
さきほど話題に出た海外に向けての視点というのは、メンタリングでの気づきだったのですか?
實廣
海外に向けてというところは特にアドバイスは頂いてなかったです。
元々、横浜市の助成を受けて、既にシンガポールの展示会の出展が決まっていました。
そこで実際に海外の現地卸さんを見つけたりとか、動物病院やペットサロンの現地の方と話をしたりして、そこの可能性が高まったというところですね。

日本と海外とでの予防に対する意識の違い

大場
最終発表会の朝に、シンガポールから帰ってきましたっておっしゃっていましたものね。
とても大変でしたね、お疲れ様でした。
實廣
大変でした。はい 。
大場
日本と海外とでは違う特徴があるのですか?
實廣
どういう切り口かによりますけども、保険制度は違ったりはします。
まあでも日本もそうですけど基本的に自費治療です。
ですので、あまり病院に行かなかったり、手術を受けづらかったりするという事情はあると思っていて、そこは日本とそんなに変わらないと思っています。

日本とは違って、海外では比較的高所得者層の方が、ペットを飼っているイメージがあります。
高級住宅街の中に動物病院やペットサロンがあったりするようなイメージを持ちましたね。
大場
なるほど。そうすると歯周病予防は海外の方が受け入れやすいかもしれないですね。
實廣
そうですね。 興味を持っていただける可能性は高いだろうと思います。
あとは人間の医療の考え方にもよると思っていて、飼い主の考え方ですね。
日本ってやはり保険制度が整っているので、あまり予防ってまだまだ浸透していないと思うんですけども。
海外は人間の医療の保険もまちまちだったりするので、予防するのが大事みたいなことは浸透していると思います。
特に欧州、アメリカとかは。
なので、そういう流れを汲んでで、おそらく飼い主さんの意識も違うし、それによってその犬猫に対する接し方みたいなところも違うんだろうなと思っています。
大場
まず日本でビジネスモデルを作って、それをベースに海外のそれぞれ事情に合わせて展開していこうという感じですね。
實廣
はい。 そもそも卸さんがいないと売るのが難しいので、そこの卸を探すところからになります。
そこが一番のハードルかと思っています。
それが一足先に進んでいるのがシンガポールというところですね。

目標は、犬猫の寿命と健康寿命を延ばすこと

大場
ビジネスをスケールさせるために、まずはどこから攻めますか?
實廣
一旦、キットの販売に注力しようと思っています。
そこでもし個別相談が必要であれば、弊社で対応するということを考えています。
今まではユーザーさんに「個別相談は必ず受けてください」とご案内していたのですが、「個別相談は必要なら受けてください、そういう指導もできますよ」というスタンスにしようかと思っています。
ただ、そこも動物病院などとの連携の中で変わってくることになります。
大場
動物病院が一次代理店になっていくイメージですね。
猫を飼っている方がもっと詳しく知りたいとなったら、御社が個別でアドバイスをするということですね。
大場
今後の目標、目指す通過点・ゴールを教えてください。
實廣
商品を販売することがゴールというよりは、今考えている歯周病に対するアプローチが本当に正しいのかというところがゴールかなと考えています。
1つのトライかなと思っています。

この歯周病のリスクチェックキットとか、何らかの形で弊社の持っている技術が、犬猫の寿命や健康寿命を延ばしたり。
他の動物を未病の段階からの早期発見に繋がったりするような未来が実現できるように。
そのためにどうやってものを作ったり、サービスを作ったりすればいいのかというところを引き続き考えていくというのが弊社のやることかなと思っています。
頑張っていきたいと思います。
大場
犬猫は家族のようなものなので、それが実現できると、とても幸せな世界になるだろうと思います。
實廣
弊社は基本的には、人以外の動物しか対象にしないということは決めています。
その健康寿命を延ばすなど、そういうところで貢献できたらいいなと思っています。

MIT-VFJビジネスプランコンテストの応募を考えている方たちへ

大場
今後MIT-VFJビジネスプランコンテストの応募を考えている方たちへ、ひと言メッセージをお願いします。
實廣
メンタリングを受けている間はずっともがいてたのですが、 結果的にはなんだかすぐに終わっちゃったなと思いました。
当初のアドバイスをいただこうと思っていたところの、その手前にいろいろあって。
そこを埋めていく作業みたいなところで終わってしまったなというところがありました。
いずれやらなきゃいけなかったところなので、そこが良かった点でもあります。

しかし、確かに良かった点でもあるのですが、自分自身の事業のどこをに対してアドバイスをもらいたいのかというところを早めに定めておいて、そこに対して全力投球するみたいなところが、一番いいのかなと思いますね。
メンターの方々は本当に素晴らしい方ばかりなので、もう背中を預けていただいていいと思います。

短い間ですが、とても濃い内容だなと思っています。
様々な角度からメンタリング、アドバイスをいただける素晴らしい場だったと思います。
迷っている方は1回出てみたらいいと思います。
小澤
メンターの方とはその後ご連絡を取っていますか?
實廣
担当メンターのお二人ではないのですが、11月1日の最終発表会後の交流会で、他の方の担当メンターさんである西山さんからお声をかけていただいて、その後メンタリングをしていただきました。
そこからかなり構造的にビジネスプランが整理できて、それがすごく良かったと思っています。
ビジネスプランの壁打ちをやりますよと言っていただいて。
またご連絡しようかなと思っているところです。
小澤
MIT-VFJのメンターは全員プロボノで、大変お忙しい中で、貴重なお時間とノウハウを無償で与えてくださっている、非常に志ある方たちばかりです。
今後もご縁を繋いだ方とお付き合いしていけると思います。
このビジネスプランコンテストは、単なるコンテストではなく「様々なきっかけを生み出すもの」だと私は思っています。
MIT-VFJのネットワーク、この場から生まれる多くのものがあると思うので、それを活かしていき、是非是非大きく成長し、世の中に素敵なインパクトを与えてください。
そうなると私たちもとても嬉しいです。
實廣
ありがとうございます。分かりました。
小澤
個人的にもすごく応援していますので。
實廣
ありがとうございます。
皆さんのそういうWelcomeなスタンスというのが、今分かったのでとてもありがたいなと思いました。
大場
本当に皆さんがとても応援していますから。
小澤
メンタリング後には最終発表会があり、そこで終わりのように見えますが、本当はそれが終わりではなく、ビジネスの成長成功というのがゴール。
そこをメンターの方たちも理事一同も応援しています。

實廣 亜希子(じつひろ あきこ)氏 プロフィール

筑波大学発ベンチャー株式会社Ani-lience 代表取締役
【略歴】
神奈川県出身、在住。
・2017年 飲料メーカー研究員として新卒入社
・2021年~2023年化粧品メーカー出向
・2023年~現在 飲料メーカー知財戦略推進部所属
・2024年に株式会社Ani-lienceを設立。
大学院時代に研究してきたヒトの糖尿病に関する血液中のバイオマーカー探索研究が現在の事業の着想になっている。
ペットオーラルケアアドバイザーを取得して飼い主のデンタルケアのお悩みに答えている。

株式会社Ani-lience (2024年5月15日創業 現在までの歩み)
2023年11月 女性起業チャレンジ大賞 グランプリ
2024年3月 よこはまアイデアチャレンジ 最優秀賞
2024年1月 ふくしまベンチャーアワード 優秀賞、HRM総合事務所賞
2024年1月 RED HOKKAIDO サポーター賞
2024年1月 KSPビジネスイノベーションスクール 修了
2024年2月 横浜ビジネスグランプリ 審査員特別賞、湘南信用金庫賞、かながわ信用金庫賞、横浜市信用保証協会賞

聞き手 大場さおり

聞き手 小澤みゆき

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