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BPCC13新日本賞 藤田純一氏インタビュー

新日本賞-藤田純一氏インタビュー

インタビュー第二回は、BPCC13新日本賞を受賞した藤田純一さんです。

プロフィール
藤田純一(ふじたじゅんいち)
モーションポートレート株式会社 代表取締役
第13回ビジネスプランコンテスト&クリニック ストラテジックグロース部門 新日本賞
ソニー木原研究所所長を経て2007年に独立。
プレイステーションのグラフィック処理エンジンなどを開発

一枚の写真に動きを与える技術
聞き手:よろしくお願いします。まず藤田さんの会社の製品について教えてください。

藤田:見ていただくのが一番早いと思います。基本的に一枚の写真から自動的に三次元の顔モデルを作って、それをアニメーションさせるという技術です。

 

聞き手:ソフトウエアですね。

藤田:はい、ソフトウエアです。これ、ビデオのように見えるんですけど、三次元CGで、なおかつ1枚の写真から作っています。



聞き手:これは一枚の写真からできているようには見えないですね。これの元になる写真は、普通のカメラで撮るんですよね?レンズが複数あるような特別なカメラで撮るわけではなく。

藤田:そうです。例えば…ここにスティーブ・ジョブズの写真があります。これをドラッグ・アンド・ドロップすると…顔の各所の特徴点を認識して、そこから三次元モデルを瞬時に作ることが出来ます。

(スティーブ・ジョブズの写真が動き出す)

聞き手:今、ジョブズの写真をドラッグアンドドロップしたら数秒で顔が動くようになりましたよね。僕の写真でやってもすぐに…

藤田:なります。

聞き手:すごいですね。

藤田:そしてですね、こういったかたちで音声を入力してあげると、リアルタイムで音声を解析して、リップシンクすることができます。

(音声ファイルを追加)

聞き手:本当に喋っているみたいですね。

藤田:ちょっとこれはお遊びですけど。こういう髪の毛を付けたりとか、ジョブズは眼鏡をかけているんですけど、めがねをこうかけたりとか。ひげを付けたりとか、そういうことができます。

聞き手:このアプリはもう販売中なんですか?

appstore

藤田:はい。App Store(アップストア)には20以上のアプリがあります。

聞き手:え?20以上というのは…。

藤田:いまお見せしたのはあくまでも要素技術のデモなんですね。この技術を利用したアプリケーションは20以上出しています。例えばゾンビブース。

聞き手:顔がゾンビになるんですね

藤田:これは2,000万以上ダウンロードされています。有料版と無料版の両方あります。

聞き手: 初め無料だけれども、機能を拡張しようと思ったら有料版になるんですね。

藤田:無料だと1日何回しかできない。回数制限なくやりたければ、お金を出してちょうだいというモデルです。

聞き手:有料ダウンロードはどれくらいいきます?

藤田:有料だと、どうだろう。全部で100万ぐらいは…。

聞き手:じゃあ20人に1人くらいは有料版にしてくれるということですね。

藤田:他にもいろんなアプリがあって。ヘアスタイルのシミュレーションもできる女の子用のアプリとか。これは好きなヘアを自分の顔で試せるんです。

アメリカ市場を狙う

藤田氏
聞き手:例えば、ビジネスコンテストに出るときは、市場規模を聞かれると思います。その点については、どういうふうに考えていらっしゃったんですか?

藤田:最近になって他社から似たものが出てきましたが、そもそもがこういうものはなかったので、市場規模とか数字は入れにくかったですね。新たに市場を作っていくわけなので。
最近アメリカでビジネスを始めたので、アメリカ市場に絞って言いますと、アメリカではeラーニングと、デジタルサイネージ。あとeグリーティングにフォーカスしようと思ってやっています。

聞き手:eグリーティングという言葉があるんですね。グリーティングカードに自分の写真をくっつけて送ろうということですね。

藤田:そうです。アメリカはeグリーティングがすごく市場としては大きくて、グリーティングカードで7,500億円ぐらいの市場があるんですね。その内まだ8パーセントぐらいしか「e化」されていないんですよ。間違いなくその市場は伸びていくだろうと。
今伸びていない理由は、パーソナライズできていないからだと思っています。うちの技術を使うと、自分が犬に変身して、音声を録音してメッセージを送れます。とちょっと他社ではできないことでeグリーティングの市場を取りたいと思っています。

聞き手:デジタルサイネージは?

藤田:デジタルサイネージは、市場としては結構大きいですけど、ちょっと伸び悩んでいるんですね。その理由はコンテンツを作るのにコストがかかること。モデルを雇って撮影して、編集してという手順を踏まないとデジタルサイネージはできないんです。コストがかかるんです。うちの場合には、写真1枚と音声さえあれば、動画風のデジタルコンテンツが作れるんですね。もちろんすごくお金の掛った大がかりなデジタルサイネージには使えないんですけども。小店舗でプロダクトを説明するような、そういったものであれば使えるんじゃないかなと思っています。

聞き手:そうかもしれませんね。面白い。eラーニングも同じ理由でいけそうですね。写真1枚あれば、しゃべっているように見えるわけですから。

藤田:そうです。あとうちの技術で、年齢とか性別っていうのも判別できるんですね。だからサイネージ、カメラの付いたサイネージにしておけば、それを覗いている人がどのぐらいの年齢だとか、性別がどうなのかというのが分かって、それを使ってメーカーがプロダクトプランニングできる、というようなこともやろうと思っています。

ソニー木原研究所から生まれた

聞き手:ところで、藤田さんはどのようなご経歴なんですか。

藤田:僕は、ソニー木原研究所でコンピュータグラフィックス関係や、イメージ処理の技術開発をしていまして、最後の2年ぐらいは社長をやっていました。

聞き手:プレステの開発に関わった?

藤田:プレステ2のGPUというグラフィックシンセサイザーの開発のリーダーをやっていました。

聞き手:そういうバックグラウンドがあるから、こういうことができるんですね。ちょっと勉強したぐらいじゃできないですよね。

藤田:そう思います。

聞き手:それでご自身の会社を作ったのは、ソニーの木原研究所を辞めてですか?

藤田:そうです。2007年に設立しました。2006年にソニーの社長が代わって、研究所が本社に吸収されちゃったんですね。ソニーはちょっとあまりにもでかい会社で、何をやっているのか分かんないので、つまんなくなって2007年に独立しました。

聞き手:2007年というとストリンガーの時でしたっけ?

藤田:いえ、中鉢さんに変わった時ですね。

聞き手:ソニー研究所の社長もやられていたとなると、起業するときにすでに人脈はいっぱいあったんですよね。

藤田:それが、研究所はソニーの中でも別会社だし、やっぱり僕は技術者なんで、あんまりそういうヒューマンネットワークっていうのに関心がなかったんですね…

聞き手:なるほど、だからMITのコンテストに応募してみようという動機になったんですね?

藤田:いや…。実は僕が応募したのではなく、うちの社員が勝手に申し込んだんですね(笑)。社員からすると「お前ちょっと社長だし、外に出てネットワーキングしてこい」っていう意味だと思うんですけど。それはそうだなと思って「じゃあ出ます」って言って出たのが実際のところです。

聞き手:そうなんですか。社長に対して「ネットワーキングしてこい」って?

藤田:そう思いますよ。これによって少しは会社名が売れるだろうと。あと「お前、社長らしい仕事をしろ」と。「エンジニアだけやってるんじゃない」というメッセージだと思います。

聞き手:ということは、社長になっても自分でプログラム開発をしてたんですね。
応募者のなかには海外に出て行くためのキッカケにしたいとかいう理由があるのですけど。そういうわけじゃないんですね。

藤田:そうですね。海外に行くことは昨年の頭に決めていてその頃は毎月3泊くらい海外に行っていました。去年の10月に会社を作った時にはもう海外進出することは決めていました。

プレゼンに対するアドバイスが役立った

聞き手:分かりました。それでは、昨年のビジネスプランコンテスト&クリニックの話しになるんですけど、参加されてどんな印象を持たれていますか?

藤田:ワークショップのことですかね。理事長さんのプレゼンテーションセミナーを受けた後に、ワークショップでは英語でプレゼンをしました。そのときには、競合他社の情報を入れると良い、などのいくつかアドバイスをいただきました記憶があります。その後、コンテストの発表会でした。

聞き手:コンテストで新日本賞を受賞してから、何か変化はありましたか?引き合いがあったとか、声が掛ったとか。

藤田:いろいろな方からお声掛けはいただき、面白そうな会社だということで、何社かには来社していただきましたが、まだビジネスには結びついてはいないですね。

聞き手:藤田さん自身は今でも、やっぱり技術畑でプログラム開発をしているほうが好きということでしょうか?営業活動は社員に任せてる感じですか?

藤田:いや、そうも言っていられないので、アメリカのマーケットは私がやっています。日本のマーケティングに関しては、こちらのスタッフに任しています。

聞き手:今回のコンテストに参加した後では何か変化はありましたか?

藤田:僕は元来エンジニアなんで、ネットワーキングとかって苦手な部類なんです。けれども、特にアメリカはそうなんですが、ネットワーキングがなければビジネスが全くできない世界じゃないですか。だからそういうことに気付くと共に、そういうことを頑張って嫌でもやらなければいけない、という認識を持ちました(笑)。

聞き手:それで昨年アメリカに法人を作ったわけですね。あと受賞の副賞として、EY Strategic Growth Forum 上海に行かれたとき、そちらでもネットワーキング活動を精力的にやった。

藤田:はい、数社ご紹介いただき、面談をさせていただいています。1社アメリカの会社と面談したんですけど、非常に興味を持ってくれて、非常にクリエイティブな会社でした。彼らとしては、うちは技術の会社だと思ってくれて、コラボレーションすることによってシナジーができるよね、っていうふうに言ってくれました。
先週は僕はサンフランシスコにいたんですけど、そこでもう一度会いました。相手はミネアポリスの会社なんですけれどたまたまサンフランシスコに来たと連絡があったので。「フューチャープロジェクト頑張ろうね」っていう話しをしました。もしかしたら、ビジネスに結びつくかなとは思っています。

聞き手:今年のコンテストに応募してみようかと思っている人も居ると思うんですけど、そういう人に対して、何かメッセージみたいなのがありますか?

藤田:賞を取ればタダで海外に行けます(笑)。というのは冗談として、やっぱりコンテストに出ることによって、プレゼンテーションの仕方を教えていただけたことと、いろんなネットワークができたのがよかったです。
個人的に一番よかったのは、プレゼンテーションをするためには、自分の考えをすっきり整理させなきゃいけないじゃないですか。それって普段は忙しくてなかなかできないと思うので、いいきっかけになったと思います。

聞き手:プレゼンの練習を結構やられたわけですか?

藤田:そうですね。プレゼン練習もそうですが、プレゼンを作ること自体が一番重要だと思います。頭をすっきりさせるために、です。例えばスライド20枚作って、多分10枚は捨てることになると思うんですけど、そういうプロセスが重要だと思います。

聞き手:自分のアイデアの肝は何かじっくり見つめなおすんですね。そのいい機会になったということですね。どうもありがとうございました。

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