INTERVIEW

MIT-VFJ メンター 田畑 友啓 氏

MIT-VFJは2001年〜2020年までビジネスプランコンテスト&クリニック(BPCC)を開催してきました。
MIT-VFJ認定メンター*が応募者に徹底したメンタリング・アバイスを行い、事業計画の見直しやブラッシュアップを行うプログラムで、2021年からはベンチャーメンタリングプログラム(VMP)と名称を改め、より一層メンタリングに重点を置いたプログラムに変更され、起業家支援を続けております。

* MIT-VFJ役員も認定メンターも、全てプロボノ(ボランティア)メンバーで成り立っています。

さて、今月も前回に続き、MIT-VFJで長年メンターをつとめていただいている田畑友啓(たばた ともひら)さんにインタビューします。
田畑さんは異能の人。
張り巡らしたアンテナを駆使し、思いもよらない切り口でアプローチしてくる素敵な方。
田畑さん、どうぞよろしくお願い致します。

田畑さんのご経歴や現在のお仕事などを簡単に自己紹介ください。

田畑

東京大学で博士(工学)を取った後、アメリカカリフォルニアの大学でポスドクをするうち、魔がさしてベンチャー企業にエンジニアとして就職したら、合計ベンチャー企業3社を渡り歩きました。
その後東京大学の産学連携関連の部署で働き、東大発ベンチャーでエンジニアした後、広島県福山市に移住してフリーのエンジニアをしています。

「魔がさした」とはおもしろいですね。

田畑

アメリカの企業に憧れもあり、「おもしろそう」と思って行っちゃいました。
アメリカの大学の研究室の先生が起業していて、そこを手伝っているうちに「こっちにこないか」と言われて入ったものの、すぐに立ちゆかなくなってしまいました。
CEOがもう一度全然違うネタで立ち上げ、同じメンツで開発しました。
開発が終わってやることがなくなり、また別のベンチャーに拾ってもらいました。

MIT-VFJでメンタリングをご担当頂くことになったきっかけは?

田畑

大学同級生の故本橋元理事長に誘われました。

MIT-VFJでは今までに何チームくらいご担当をいただいていますか?

田畑

ビジネスプランコンテスト&クリニック(BPCC)10 から連続13回です。

田畑さんがメンタリングを行う上で、特に気をつけている点、留意している点があれば教えてください。

田畑

メンタリングは通常2週間に1回くらいのペースでやっていて、中間発表や最終発表が近づけばビジネスプランの整理やスライドの推敲、プレゼンの練習などのテクニカルな作業のサポートをしています。

それまでは何をやっているのかというと、最終的なビジネスプランを見据えて、議論したり、ブレストをしたり、プラン中不足している要素に目を向けたりするのですが、最近はメンティーから「壁打ち相手です」と言われることがあります。
便利な言葉ができたなと思います。

メンティーは、日々様々な項目に頭を悩ませているわけですから、別々の専門性を持つ数人で構成されるメンターチームに、悩みを何でもぶつけられる機会はとても有益なようです。

こちらとしても数人集まれば、たいていちゃんと何かは返せるので、チームとして立派な「壁打ち相手」になれるよう心がけています。

また、私個人は、メンタリング中、どこまで大きなビジネスになれるかを妄想し合う機会を一度は作っています。
今まで負けたことはありません。
ビジネスの大きさに優劣はないのですが、私がメンティーに勝てる視点はそれくらいかなーと思っているので。

また、人によって違う部分もあります。
自分の子どもくらいの歳の方もいますし、自分より年上の方もいます。
相手が若い方の場合、一方的な押しつけにならないように気を遣います。

「妄想しあう」のはどんな内容でしょうか。

田畑

ブロックチェーンのビジネスプランがあったのですが、それが何もかもトントン拍子に行ったらGAFAを超えるものにもなり得るね、と、なりました。
この時は、負けはしませんでしたが、勝ってもいないので、引き分けです。

ビジネスというものは、リーダーが思い描いた以上のものにはならないですから。
例えば、ある程度のサイズになった時に、「どことどこに支社を置きますか?」などとやったこともあります。
全国展開したら1箇所じゃ足りないですよね。

いろいろなサイズのビジネスがあってよいと思いますが、せっかく、ベンチャーメンタリングプログラム(VMP)に応募してきてくださったからには、社会を変えられる事業であったら、変えて欲しいし、私たちメンターがぜひサポートしたいです。

メンタリングに向いている方はどのような方でしょうか。

田畑

「すごい技術はあるが、ビジネスはどうしたら良いのかわからない」そんな方でしょうか。
そこを私たちメンターがうまくメンタリングできたらいいなと思っています。

今までメンタリングをご担当頂いた中で、最も印象に残っているチームをご紹介ください。どんなビジネスモデルでしたか。そして、強化しなければならないと思った点を教えてください。

田畑

今でもお付き合いのあるチームがたくさんあるので、これものすごく答えにくいです。(苦笑)

一番と言われればBPCC/VMPではなく、MIT-VFJから派遣された 2013年のキャンパスベンチャーグランプリでメンタリングした吉藤オリィさんのオリヒメです。
アバターロボットを使うことで病院から外に出られない人でも外に出られるという事業で最初にプレゼン見たときは、感動して文字通り涙が出ました。
今ではすっかり有名になって嬉しいです。

その時からずーーーっと、経営を安定させるために一般向けにもサービスすべき(単身赴任とか一人暮らしの親を対象)と言っていましたが、全く違う道を進みました(苦笑)。
まさかカフェを開くとは。

他にも、入院中のお母さんが家で子どもを出迎えたりすることもできますね。
「テレビ電話ではダメなの?」という質問は一番初めからありましたが、テレビ電話では実現できないこと…例えば、生活の中で、同じ方向を向いて一緒にテレビを見るとか、そんなこともできるのでとても良いと思いました。

BPCC/VMPの中では、2014年にメンタリングした コラボプラネット社、西原 申敏さんです。
学習塾が成り立たない地方に出張型学習塾を展開するというビジネスプランで、地方に住む身として切実な問題に取り組まれています。

その後なかなか派手な展開にはなっていないのですが、今年になってとあるセミナーで「最近塾生と先生の振り返文に対して、ChatGPT を活用する例」を発表されていて、ひょっとしてここから派手な展開始まる?ととてもわくわくしています。

先生一人で、塾生全員につきっきりにはなれません。
そういうこところの問題を、ChatGPTを活用して解決しています。
地方の教育は問題を多く抱えているので、これはブレイクスルーになるのではないかと思います。
西原さんは、諦めずにずっと活動されていて頼もしいなと思います。

そのメンタリングは上手く行きましたか?どんなアウトカムが得られましたか?

田畑

でもメンタリング当時は最優秀賞を取ることができず、とても悔しい思いをしました。
私は地方に住んでいるので地方のベンチャーを担当することが多かったのですが、コンテスト形式だった BPCC では、結局地方のベンチャーが最優秀賞を取ることは一度もなかったように思います。
心残りです。

反対に、うまくいかなかった、あるいはあまり効果が見られなかったメンタリングは?その原因は?

田畑

初回のメンタリングで反感を買ってしまい、そのままギクシャクしたまま終わったことがあります。
プログラムが終わったあと、後でその時の意味が分かったと言ってもらえたのですが、苦い経験です。

VMPプログラムで、田畑さんからご覧になって不足していると思われる点があればお聞かせください。

田畑

特にないです。

現在、各チームメンタリング真最中だと思いますが、9月末の合宿で、田畑さんとしては、ご担当のチームにどこまでの成果を期待されますか?

田畑

今メンタリングを始めて1週間余りが経ったところです。
社会的意義が高いビジネスが多いのですが…実はとてもお金の臭いのする事業ということに不覚にも昨日気づきました。

自分で言うのもなんですが、この私ですら臭いに気づくのに苦労したので、お金の臭いがするプレゼンをするのは大変だと思います。

合宿の発表で聴衆に「ちゃんとビジネスになる」「これ儲かるかも?」と少しでも思ってもらえたら満点です!

田畑さんご自身が興味を持って取り組んでいらっしゃることについて、プライベートでもお仕事でも結構ですので、差し支えない範囲でご紹介ください。

田畑

ChatGPT を使った相談プラットフォームを画策中です。

お仕舞いに、MIT-VFへのリクエストや期待することがあればお聞かせください。

田畑

VMP以外にもメンタリングプログラムがたくさんある時代になりました。
各プログラムで活躍されているメンター同士が交流できるプラットフォームになってほしいです。

 

田畑 友啓(たばた ともひら) 氏 プロフィール

株式会社産業創出ネットワーク 代表取締役
元東京大学産学連携本部特任准教授等

東京大学の光学分野で博士(工学)を取得しました。アメリカカリフォルニアでポスドクをするうち魔が刺して、ベンチャーでのエンジニアを3社転々としました。
東京大学に戻り産学連携本部で大型共同研究のマッチングをしました。東大発ベンチャーエクスビジョンで開発をしました。
一人会社を設立後、受託したりコンサルしたりしています。
現在は特に高速画像処理分野で計測装置開発中です。

博士(工学)、日本ディープラーニング協会g検定合格、FBAA(日本ファミリービジネスアドバイザリー協会)フェロー、幸せビジネス心理アドバイザー、を持っています。
産学連携時代に広範囲分野での経験を持ちました。

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