INTERVIEW

VMP23ファイナリスト
株式会社ほむすび 代表取締役 黒須 貴子 氏

MIT-VFJ登録メンターによる徹底したメンタリング・アバイスによって、事業計画の見直しやブラッシュアップを行なうベンチャーメンタリングプログラムVMP。
2023年12月のVMP23でファイナリスト認定された皆さんへのインタビュー、第二弾は『命を守る建物の防災設備を教えます!【防災ハウビル】』を発表され、HIROメモリアル賞ほかを獲得された、株式会社ほむすび 代表取締役 黒須 貴子(くろす・たかこ)さんに登場いただきます。

まず、貴社、株式会社ほむすびの概要について教えてください。

黒須

2022年9月1日防災の日に法人設立をしました。
創業して1年ほどで、業務内容は防災教育や防災コンテンツの制作をしております。
防災の記事を依頼されて執筆したり、防災のワークショップや講演会をやっています。

 

黒須さんが「防災ハウビル」を立ち上げたきっかけは?

黒須

2009年に株式会社よつばメンテナンスという消防・防火設備点検の会社を立ち上げました。
その時からずっと思っていたことがありました。
建物には法律によって防災の設備がたくさん付いているのですが、あまりにもそれが一般的に知られていないのです。
私もこの仕事をするまでは、全く知らないことばかりでした。
実際に点検をやるようになって、いろいろな物件で実際に防火シャッターを下ろした状態を見たりしました。
この状態だと、火災の時には、人はパニックになって、閉じ込められたと思ってしまい、逃げ遅れて死亡するような事故が多数発生しています。
通常の消防訓練にプラスアルファして、防火シャッターや防火扉が閉まった時の逃げ方や、消火栓の使い方などを教える必要があるのに、実際の避難訓練や防災訓練は、そこまできちんと教えることをしません。
「法律で決まっているからとりあえずやっている」ということが多くなっているんです。
設置や点検にかなりコストをかけたにもかかわらず、結局有効利用できていないという現状をなんとかしたいと思いました。
そこで、「防災ハウビル」を作りたいなと思いました。

■防災ハウビルとは
建物に設置されている防災設備を、分かりやすく紹介します!いざという時「どうやって使うのか?」「どうやって逃げるのか?」設備士の生きたノウハウで、あなたの命と財産を守るサービスです。

株式会社ほむすびの組織形態はどうのようになっていますか?

黒須

よつばメンテナンスを売却したタイミングで、ほむすびを設立しました。
1人で立ち上げて、いま基本的に1人でやっています。
よつばメンテナンスのサービスは未だに人の手によるサービスなので、かなり雇用を拡大し、組織を大きくしていき、人事や採用に労力をとられることがあったんです。
ほむすびの方では、できるだけアウトソーシングをして雇用や組織作りに労力をかけないようにしようと思いました。
よつばメンテナンスにも、私はまだ顧問として残っていて、そちらでは今はメーカーと一緒になり、全国展開・拡大しているところです。
当面はグループ会社と関連提携していく形をとり、ほむすびのサービスを提供していく予定です。

VMP23に応募された経緯を教えてください。

黒須

私は、2018年の暮れにガンが見つかり、休養に入りましたが、その時に治療して寝ている生活というのは時間がもったいないなと思いました。
その間もみんな毎日仕事しているのに…と思ったんです。
自分としては、これからの10年では、もっとITの勉強をしたいなと思っていたので、オンラインで学べるというサイバー大学を見つけ入学しました。
ガンになった時、これはまとまった時間をいただけたということだと思いました。
抗がん剤治療してベッドで寝ながら、点滴を打ってる時にでも、サイバー大学の授業は受けることができるんです。

その後、4年生の時に、馬場先生(MIT-VFJ理事、馬場研二さん)のゼミナールを取っていて、そこで作った事業計画書が今回応募したものなんです。
馬場先生が、メンタリングのプログラムがあるので、これをそのまま応募したらいいんじゃないかと教えてくださいました。

何を期待してVMP23に応募されましたか?

黒須

自分1人でやっているので、あれもやりたい。これもやりたいというのが多すぎて、結構まとまりがつかないというところがあったんです。
事業としてやりたいことをきちんと作っていきたいなと思っていました。
今まで、他の方の意見を聞いたり、メンタリングというものを受けたことがなかったので、起業された経験豊富な方に色々と相談させていただきながら、ビジネスをちゃんと作りたかったんです。
よつばメンテナンスの場合は防災設備点検が事業で、既存の仕事でしたが、ほむすびの場合は既存ではない仕事でしたので、ゼロベースでものを作っていくという難しさがありました。
そこを形にしたいと思い期待して応募しました。

MIT-VFJのメンタリングを受けて、最初に感じたことを教えてください。

黒須

担当メンターは、田畑友啓さん、藤原由佳さん、山村由美子さんの3名の方でした。
最初に感じた事は、こんなに熱心にやっていただけるのかと、感激しました。
ボランティアベースで運営しているということをお聞きしましたが、メンターのみなさんは本業でお忙しい中で、私がちまちま作っていたビジネスプランを本当に真剣に理解して、良くしていこうという気持ちを持ってくださっていました。
それがものすごく伝わってきて、なんてありがたいんだろうと思いました。

メンタリングの頻度と方法は?

黒須

メンタリングは、オンラインで2週間に1度の週末で、2時間やりました。
終わった後にメッセージで、田畑さんがスライド1枚1枚1枚にものすごく細かいコメントを入れてくださり、とてもありがたかったです。
山村さんも、藤原さんも、それぞれの得意な分野があり、山村さんは防災に関してとても詳しく、また、女性の目線でのお話も共有できました。
藤原さんは、会計の分野のプロなので、数字の部分でかなりアドバイスをしていただきました。
3名の方、それぞれの専門の分野が違うので、ほんとに恵まれた環境環境で、この3ヶ月を過ごすことができました。

HIROメモリアル賞を受賞されましたが、この賞は「最も厳しいメンタリングに耐えたチーム」に授与されます。メンタリングは厳しかったと思われるでしょうか?

黒須

私の事業をメンターの皆さんにまず理解してもらうまでは、特に大変でした。
メンターの方からはいろいろな質問を受けていました。
同じような質問をメンター以外の方からもよく受けていました。
防災の設備を動画にするのであれば、コストをかけないで、消火栓なら消火栓で同じ種類のものを使い回した方がいいんじゃないかとか、なぜ横文字を多く使うのかとか。
そういう事を説明するのに、まずは消防設備の古い体質の業界の仕組みと、防災や建物の仕組みはどうなっているのかということを、わかりやすく説明するのが必要で、最初は大変だったんです。

でもお話をして説明していくと、「そういう意図があったのか」とご理解いただいき、そこからはスムーズに進めることができました。
防災関係は保守的で独特な業界なので、説明するのに手描きのイラストとスライドを作って説明したりしました。
そのおかげで、メンターの方にとても深く理解していただくことができ、とてもありがたかったです。
お客様に説明するのも、そこに課題があるなということがよくわかりました。

メンターの方達には、ここまでの熱意を持ってやっていただいたので、それに応えたいなという思いがありました。
ファイナルで一緒になった他の方とお話をしていたら、「夜中までメンタリングをやったりして、すごかったんですよ」と言う方達がいました。
私はそこまでのことはなかったんですけれども。

HIROメモリアル賞は、実は一番気になっていた賞だったんです。
この団体の中でとても重きを置いている賞なのではないかと思っていたので、それをいただけたところが本当に嬉しくて。
いただいたパネル(授賞式で使用したパネル)は飾ってあるんです。
時々、鈴木啓明さん(※)のブログを見たり、お写真を見たりして励まされていました。
とてもありがたかったです。

※ 故 鈴木啓明 氏 MIT-VFJの元理事長。多大な尽力を讃え、賞に名を冠しています。

メンタリング合宿に参加された感想をお聞かせください。

黒須

正直なところ、合宿をやる前は、合宿の必要性を感じていませんでした。
忙しいのに…と思ってたんですけれど。
しかし、合宿に参加してみたら、リアルで直接お会いでき、本当に楽しかったです。
他のファイナリスト候補のチームの方達、オンラインでしかお話ししてなかったメンターの方達や、馬場先生と、同じ空間でいろいろ意見を出し合って話し合い、リアルってやっぱり大事なんだなぁと本当に思いました。
他のグループのメンターの方々からもたくさんアドバイスをいただきました。
たくさんの人と直接コミュニケーションが取れて、本当に忘れられない思い出になりました。

実はこの会場のホテルは、よつばメンテナンスを創業して間もない頃に、初めて社員旅行に行ったホテルだったんです。
その後そのホテルの点検もやったので、とてもご縁のあるホテルだったんです。
そこに十数年ぶりに来ることができて感激しました。

メンタリングを受けている間、困ったなと思ったことは?

黒須

前述の、メンターの方にまずご理解いただくということが大変でした。

また、メンターの方が3名いたのですが、女性目線と男性目線の違いがありました。
例えば、ショッピングモールの施設の防災のことを女性に話すと「育児をしている時にそれをもっと知りたかった」などとよくおっしゃり興味を持つんです。
女性はそういう視点なんですが、男性の方は事業ありきなので、その視点の違いがありました。
どちらも大事なことなのですが、そのバランスの取り方というのを考えました。
これは良い経験になったなと思いました。

3ヶ月間メンタリングを受けた一番の成果はなんでしょうか?

黒須

成果は大きく2つあります。
1つは、発表するスライドのクオリティーがすごく上がりました。
最初の自分のスライドを今見返すと、こんなひどいものを出してたんだと思うくらいです。
スライドのパーツの本当にちょっとのズレまで、田畑さんがとても細かく見てくださいました。
私は「何を言ってるか分かんないよ」とよく言われるのですが(笑)、きちんと伝わるように組み立てるスキルも、メンタリングの後で大きく変わりました。
実際にメンタリングが終わった後のスライドをサイバー大学で出してみたら、馬場先生が驚いていらっしゃいました。
こんなに変わったんだねと。

もう1つは、色々なご縁が繋がったということです。
最初は、自分の事業をいろいろな形で聞いてもらえれば…と思っていたんですが、それだけではなく、たくさんの方とご縁ができて、それはとてもありがたいことだなと思っています。
たくさんのご紹介もいただいていますので、これからがすごく楽しみだなと、頑張らなきゃと思っているところです。
それもこれも、このプログラムに参加したおかげです。

その成果は、今後の貴社の発展にとって、どのような変化をもたらすと思われますか?あるいはどのように変化していくでしょう?

黒須

いろいろな方のアドバイスをいただいて、自分の軸がやっと見えてきたと感じています。
メンター以外の方からもいろいろなアドバイスがあり、たくさんの視点で考えていけたというのが、このプログラムの良いところだなと思いました。
皆さんには、本当になぜここまでやっていただけるんだろうと思いました。
合宿の時のお食事で理事の大野さんの隣の席になった時に、それをお尋ねしてみたところ、「私たちも今まで人にやってきてもらったから、それを次に繋いでいる。みんな、こういう活動が好きなのよ」とおっしゃっていました。
そして「次はあなたが後に続く方にやってあげてね」と言われたんです。

今回自分がやりたいことを多くの方に聞いていただき、ここで会った方の更にその先の方達からもご縁をお繋ぎいただいています。
コネクションがすごく広がりができたことは大きな成果です。

貴社の目下の課題は?

黒須

まだきちんとこの事業で売上を立てているわけではないので、今後はきちんとマネタイズできるように仕事を軌道に乗せていきたいと思っており、これが課題だと思っています。

ボランティアをベースとしたMIT-VFJの活動に対し、期待されることがあれば教えてください。

黒須

ボランティアでここまでやっていただいて、ありがたいなと思っていますので、このプログラムをもっとたくさんの人に知ってもらい、応募する方もたくさん増えるといいなと思いました。
また、スポンサーになってくれる企業ももっと増えるといいなと思います。

今後、VMPに応募を考えている方たちへ、ひと言メッセージをお願いします。

黒須

こういったメンタリングプログラム、コンペ、ビジネスコンテストのようなものはたくさんあると思うのですけれど、ぜひこのプログラムにチャレンジをして欲しいなと思います。
ファイナルに残るか残らないかではなく、応募しようと決めることで、自分でやりたい事業を客観的に見る良い機会になると思っています。
例えば、ビジネスサマリーを作るにしても、事業計画書を作るにしても、もう一回客観的に俯瞰して自分の事業を見ることになります。
事業を、自分でなんとなく始めるのと、こういう機会を使うのと、全く違うんです。
チャレンジすることに意義があります。

自分の経験から考えると、やはり応募した後では人脈が広がり、ずいぶん発展したと思います。
成功の反対は失敗ではなくて、チャレンジしなかったことだと思うんです。
失敗も経験として積めます。
「あの時やっておけばよかった」と後悔はしないでほしいです。
後悔しないでチャレンジして欲しいなと思っています。

黒須さんがこれから築いていくのは、どのような未来ですか?

黒須

多くの人たちが、防災の設備やインフラを「法律があるからただやっているだけ」ということになってしまっていて、本来の意味が抜けてしまっているんです。
本来の目的の通りにできるように、まずは日本にそういうことが定着するといいなと思っています。

最終的には、災害をむやみに恐れる防災ではなく、自然と共存していかなくてはならないと思っています。
地球とどう共存していくかということを研究したり、調べて発信していきたいと思っています。
例えば、ただ、堤防を作って波を防げばいいというものではありません。
昔の人の考え方などにも意味があり、そういうことも発信したいと思っています。

 

黒須 貴子(くろす たかこ) 氏 プロフィール

育児や介護施設での経験を経て、2009年株式会社よつばメンテナンス設立。
消防設備の保守点検をワンストップサービスにて提供、また女性消防設備士の育成に努める。
2022年同社代表退任、株式会社ほむすび設立。
防災コンテンツの提供、講演、執筆、防災講座を行っている。

「生活者の視点」×「防災設備のプロ」として多角的な視点から捉えた
防災のノウハウを伝えるキャンサーサバイバー。
趣味は音楽、スノーボード、星をみること。
動物や自然がすきです。

株式会社ほむすび 代表取締役
株式会社よつばメンテナンス 顧問
消防設備士 防災士
サイバー大学 IT総合学部 在学中

SAITAMA Smile Women Pitch 優秀賞
内閣府共催J300アワード 特別賞
EY Winning Women ファイナリスト
MIT-VMP23 HIRO特別賞

株式会社ほむすび https://homusubi.com/

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